『鬼滅の刃』が大ヒット中です。
ネット上もリアルでも、多くの人が「炭治郎の優しさ」について言及しているのを見聞きしました。
炭治郎の優しさに癒やされる人々が多いのは、バブル期後の、日本経済の低迷に加えて少子高齢化で、平成生まれ以降の若者を中心に、将来への不安を抱えている人が増加しているからでしょうか。
炭治郎は優しい子です。それを否定する余地はありません。
それ以上に、私が炭治郎に魅力を感じるのは、彼が「自分軸」を強烈に持ったキャラクターだからです。
物語全編を通して、炭治郎が自分と他者を比較して、劣等感を持つ描写は見られません。
第5話で、最終選別前に、錆󠄀兎(さびと)との実力差に衝撃を受けたときでも、炭治郎は劣等感を持ち、自分を卑下することはありませんでした。
己の力のなさに打ちひしがれて、彼を妬むこともしません。
逆に、
「さっきの見たか?凄い一撃だった。無駄な動きが少しもない。本当に綺麗だった!! あんなふうになりたい俺も。なれるかな? あんなふうに……」
と、真菰(まこも)に言うのです。
劣等感に付随する妬み嫉みが、まったく見られませんね。
錆󠄀兎(さびと)についても、斜に構えたりせず、素直に評価をしています。
このシーンから、炭治郎は他人からの評価や、他人との比較で自分の価値を決めることがない人物だとわかります。
つまり、「他人軸」で生きていないのです。
炭治郎が「自分軸」をしっかり持って生きていることが、彼の強さであり、優しさの根源にあります。
「自分軸」を持って生きていることが、炭治郎を『鬼滅の刃』の主人公足らしめているのです。
このことについては、他のキャラクターとの比較によって、より強調されているように私は思います。